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なぜ減量外来はカウンセリングに似ているのか??

なぜ減量外来はカウンセリングに似ているのか??

こんにちは。冨田医院の医師、岡田一樹です。

「減量外来って、病院に行って薬をもらったり、体重を測ったりするだけでしょ?」
そう思われている方は少なくありません。しかし、私たちが日々の診療で痛感しているのは、「減量外来は、実はカウンセリングにものすごく似ている」ということです。

最近、臨床心理士である東畑開人先生の著書『カウンセリングとは何か』を読みました。その中で語られているカウンセリングの本質が、私が日々の診療で取り組んでいる減量外来のプロセスと、驚くほど深く重なり合ったのです。

今回はこの本から得た知見をベースに、「なぜ減量外来では、体だけを見ていてはダメなのか」「なぜ生活や心にアプローチする必要があるのか」について、深く掘り下げてみたいと思います。


1. 世界(環境)・心・自己(体)の3層で考える減量治療

東畑先生は本の中で、カウンセリングは人間の問題を「世界(環境)」「心」「自己(体)」という3つのレイヤー(階層)に分けて対応していくものだと述べています。実はこれ、減量外来の治療にもまったく同じことが言えます。

以前のブログで、肥満症の治療においては、単に病気をやっつける「医学モデル」から、患者さん自身の生活や行動の習慣を変えていく「行動変容モデル」への移行が大切だとお話ししました。まさにその具体的な実践が、この3つのレイヤーへのアプローチなのです。

【関連ブログ】
病院で肥満症の治療を受けているのに何故痩せれないのか? 現代医療の欠陥について

一般の内科外来であれば、「自己(体)」だけに注目し、高血圧に対して「血圧が高いから数値を下げる薬を出す」というアプローチで完結することもあります。しかし、減量外来でそれをやってしまうと、絶対にうまくいきません。

  • 自己(体):ホルモン異常、空腹感、肉体的疲労、睡眠不足など
  • 心:「ストレスで食べてしまう」「痩せられない自分を責めてしまう」という心理状態
  • 世界(環境):仕事の忙しさ、家族の理解、身近にある食べ物の誘惑、社会的なストレスなど

「体」だけを見て、食事制限や薬だけで治療できれば単純ですが、現実はそうではありません。職場の人間関係(世界)でストレスを感じ、それによってイライラや孤独感(心)が生まれ、結果として過剰に食べてしまう(体)というように、これらはすべて繋がっています。だからこそ、3つすべてのアプローチが重要なのです。

減量外来とは、カウンセリングと同じように、この3つの絡み合った糸を患者さんと一緒にひとつずつ紐解いていく場所なのです。


2. 減量外来の「インテーク面接」:食べ過ぎの裏に隠れた心の問題

心理カウンセリングでは、最初に「インテーク面接(初回面接)」という丁寧な聞き取りを行います。ここでカウンセラーは、患者さんが抱える心の病気や生きづらさを「概念化(背景にある構造をプロファイリングのように整理すること)」し、どうやって治療していくかの作戦を立てます。

私たちの減量外来の初診も、まさにこのインテーク面接そのものです。

単に「何をどのくらい食べているか」を聞くだけではありません。「なぜ、不規則な生活になってしまうのか」「なぜ、お腹が空いていないのに食べ過ぎてしまうのか」を深く掘り下げていきます。すると、そこには多くの「心の問題」が隠れていることに気づきます。

「夜中に1人で食べている時間だけが、唯一ホッとできる解放の手段だった」
「子供の頃から『残さず食べなさい』と言われ続け、残すことに強い罪悪感がある」
「将来への不安を紛らわせるために、無意識に口に食べ物を運んでしまう」

これらはすべて、決して「意志の弱さ」ではなく、心が発しているサインです。このサインを無視して「明日からカロリーを半分にしてください」と言っても、心が破綻してしまいます。食べ過ぎてしまう背景にある心の問題を一緒に整理し、概念化していくプロセスは、ある意味でカウンセリングそのものなのです。


3. 「外来の診察室」と「日常の場」を往復しながら変わっていく

東畑先生の本を読んでいて、減量外来の現場と深く重なるのが、「カウンセリングの場(安全な空間)」と「日常の場(現実の生活)」の関係性です。患者さんの人生のメインステージは、当然ながら病院ではなく「日常の場」にあります。

減量外来も、まったく同じ構造を持っています。
私たちが外来で患者さんとお話しする時間は、2週間に1回、あるいは1ヶ月に1回の、わずか30分~1時間程度です。残りの数千、数万時間、患者さんはご自身の「日常の場(自宅や職場)」で過ごされています。

治療が達成される瞬間というのは、外来の診察室の中ではありません。医師やスタッフと約束した小さな変化が、患者さんの「日常の場」に持ち帰られ、そこで少しずつ反映されたとき、はじめて減量が効率よく進んでいくのです。

「そういえば先生がああ言っていたな」「次の外来で報告するから、ここは一歩踏みとどまろう」
そうやって、外来での体験が日常の行動を変えていきます。東畑先生は本の中で、このように述べられています。

『次の(カウンセリングの)予約があること、結局これがすべてなのかもしれません。』

外来の時間そのものというより、「次の外来」を意識することで、患者さんが日常の中で健やかな努力を重ねる。そして、それが次の外来で結果として現れる。減量外来の真髄も、実はこのプロセスの繰り返しにあるのかもしれません。


4. 減量外来の「終わり」の難しさ

カウンセリングにおいて、最も難しいテーマの一つが「終結(終わり)」です。心の課題は人によって深く、ある意味では「完全な終わり」が存在しないこともあります。

そして、減量外来における治療の終わりも、非常に難しいテーマです。なぜなら、肥満症や生活習慣の管理とは、ある意味で「一生付き合っていかなくてはならないもの」だからです。

当院の減量外来では、最終的に「自分の力で体重を管理できる力」を皆さんに身につけていただくため、2年程度での卒業を目指しています。ただ、卒業した後に減量外来とどう付き合っていくかは、患者さんによって千差万別です。ここで重要になるのが、患者さんの個別性(一人ひとりの違い)です。

  • 外来卒業後はすべて自分で管理し、「もし体重が●kg以上増加したら、また外来に来る」と決める。
  • 完全に卒業するのは不安だから、3ヶ月に1回、自分の「心の健康チェック」と「体重の軌道修正」のために定期的に通院を続ける。
  • 仕事の転勤や家庭環境など、「世界(環境)」が大きく変わったときだけスポットで相談に来る。

どの選択肢が正解ということはありません。「もう来なくて大丈夫ですよ」という一律の判断ではなく、その方の性格、これまでの歩み、現在の環境(世界)を総合的に見て、患者さんにとってベストな「これからの付き合い方」を一緒に考えていく。この個別性の尊重こそが、減量外来とカウンセリングに共通するゴールです。


まとめ

以上が、私が東畑先生の『カウンセリングとは何か』を読み、減量外来に引き寄せて考えた内容です。

東畑先生は、人間の心が変化することを文学的に捉え、「人間は誰もが自分の人生を生きる小説家である」といった意味合いの表現をされています。減量にも、患者さん一人ひとりの物語(ストーリー)があります。その物語の語られ方が変わることで、真に生活習慣が変わり、生涯を通して健やかな体重を維持できるようになるのだと私は信じています。

最後に、この本はこのような言葉で締めくくられています。

『カウンセリングとは、人が可能な限り、正直に、率直に、ほんとうの話をすることを試み続ける場所である』

減量を目指す外来における患者さんと医師のやりとりも、まさにこの通りです。お互いが格好つけず、取り繕わずに「ほんとうの話」を重ねていくこと。それこそが、減量を達成するために最も重要な鍵なのだと考えています。

冨田医院 医師 岡田一樹

医療法人 尚恵会 冨田医院

医院名
医療法人 尚恵会 冨田医院
所在地
〒834-1217
福岡県八女市黒木町黒木87-1
電話番号
0943-42-0173
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