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【減量外来】なぜダイエットは頭でわかっていても続かない?「言葉の罠」と関係フレーム理論(RFT)

「痩せたいと思っているのに、目の前のケーキを食べてしまう…」
「どうして私はこんなに意志が弱いんだろう…」
減量を考えている方の多くが、このように自分を責めていらっしゃいます。しかし、お伝えしたいのは、あなたが痩せられないのは意志が弱いからではないということです。実は、人間が持つ「高度な言語の仕組み」そのものが、ダイエットを邪魔する罠になっているのです。
今回は、心理学の理論である「関係フレーム理論(RFT)」という視点から、人間が言葉を持つことで陥るダイエットの罠と、その解決のヒントを分かりやすく解説します。
—1. 関係フレーム理論(RFT)とは?
関係フレーム理論(Relational Frame Theory: RFT)とは、一言でいうと「人間の心が、言葉を使って物事と物事を頭の中で結びつける(フレーム化する)仕組み」を説明した心理学の理論です。
動物は「目の前にあるもの」にしか反応できません。例えば、目の前にエサがあれば食べますし、なければ食べ物のことを考えて悩むことはありません。
しかし、人間は違います。目の前にリンゴがなくても、「リンゴ」という言葉を聞くだけで、頭の中にその形や味、匂いを思い浮かべることができます。このように、言葉やシンボルを使って、直接体験していないことまで頭の中で自由につなぎ合わせられる能力を、私たちは持っているのです。
—2. 言語がもたらすメリット:長期の価値と「目の前の誘惑」
この能力には、人間にとって非常に大きなメリットがあります。それは、「今は目の前にない、未来の大きな価値」を言葉で描き、それに向けて行動できることです。
ダイエットで言えば、目の前に美味しいラーメン(直近の誘惑)があっても、「ここで我慢すれば、3ヶ月後には健康な体になって、着たかった服が着られる(未来の価値)」と言葉で未来を想像することで、目の前の誘惑に打ち勝つことができます。
この「言葉を使って未来の価値を優先する仕組み」については、以下の別記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてお読みください。
—【関連リンク】
減量の鍵-誘惑に打ち勝つことが出来る人と出来ない人の差は何か
3. 人間の言語が持つ「負の側面」:3つのルールと減量の罠
言葉の能力は素晴らしいものですが、同時に強烈なデメリット(負の側面)も生み出します。人間は、自分で作った「言葉のルール」に縛られ、自滅してしまうことがあるのです。
関係フレーム理論では、人間が言葉によって行動を縛られるパターンを主に3つ(プライアンス、トラッキング、オーグメンティング)に分類しています。減量外来でよく見られる実例と一緒に見ていきましょう。
① プライアンス(Pliance):他人の目や評価に縛られる罠
プライアンスとは、「他人の指示に従うこと、または他人から褒められたり嫌われたりしないこと」を目的に行動する状態です。
「職場の飲み会で、上司に『もっと食えよ』と言われて、断ったら場の空気が悪くなると思って無理して食べてしまった」
「家族に『またダイエット?どうせ無理だよ』と言われた言葉がショックで、やる気をなくしてドカ食いしてしまった」
このように、「他人にどう思われるか」「他人のルールに合わせなきゃ」という言葉の縛りが強すぎると、自分の体の声(お腹がいっぱい、痩せたい)よりも、他人の目を優先してしまい、ダイエットが失敗に終わります。
② トラッキング(Tracking):長期の価値を忘れ、短期の結果(目先のメリット)を優先する罠
トラッキングとは、「自分の過去の経験や、目の前のわかりやすいデータ(結果)を優先して動こうとすること」です。しかしダイエットにおいては、これが「目先のスッキリ感や短期的なメリット」にすり替わってしまう罠になります。
仕事で強いストレスを感じたときに、「今、甘いものを食べればスッキリする(短期のメリット)」という過去の成功体験(ルール)を優先してしまう。
「健康的な体になる」という長期の価値を忘れて、目の前のストレスを言葉通りに「手っ取り早く解消すること」に追われ、結果としてドカ食いを繰り返してしまう。
「食べれば楽になる」という目先の結果へのトラッキング(追随)が強すぎると、本来目指していたはずの長期的な健康や減量という目標が、頭の中から簡単に追い出されてしまうのです。
③ オーグメンティング(Augmenting):「頑張ったらご褒美」というルールが減量を邪魔する罠
オーグメンティングとは、「言葉によって、その物事の価値や魅力が、実際以上に膨れ上がってしまう現象」です。特に「〜したから、〜してもいい」という頭の中の条件づけが、食べる行為の魅力を爆発的に高めてしまいます。
「今週は仕事も運動もこれだけ頑張ったんだから、週末は高カロリーなものを食べてもいい(ご褒美)」というルールを自分で作ってしまう。
このとき、頭の中では食べ物が「単なる食事」ではなく、「頑張った自分を称える最高の勲章」のように価値が大きく膨れ上がっています。その結果、ご褒美の枠を大きく超えて暴飲暴食してしまい、これまでの努力を帳消しにしてしまいます。
「頑張った(言葉)」と「ご褒美としての食べ物(言葉)」が強力に結びつくことで、食べることへの渇望が必要以上に増幅され、減量を阻む大きな壁となって立ち塞がるのです。
—4. 言葉の罠から抜け出すために:心理療法ACT(アクト)
プライアンス(他人の目)、トラッキング(短期のメリットの優先)、オーグメンティング(ご褒美という価値の増幅)。これらはすべて、人間が言葉を高度に操れるからこそ起きる罠なのです。
では、この言葉の罠からどうやって抜け出せばいいのでしょうか?
その解決策として、関係フレーム理論をベースに開発されたのが、「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」という新しい心理療法です。
実は、心理学の研究から、人間は一度作った言葉のルール(プライアンス、トラッキング、オーグメンティング)を消し去ることは非常に難しいと分かっています。そのためACTでは、頭の中に浮かぶ「食べたい」「ストレスを解消したい」「頑張ったからご褒美をあげたい」というルールを無理に消そうとはしません。
その代わりに取れる効果的なアプローチがあります。それは、「言葉はただの頭の中のつぶやきであり、絶対に従わなければいけない現実ではない」と気づき、一歩引いた視点からその考え(ルール)をそっと見つめることです。
当院の減量外来でも、言葉のルールが減量の障壁になっていると考えられる患者さんには、このACTの考え方を取り入れた食事指導やカウンセリングを行っております。
ちなみに、ACT専門の解説記事は下記のブログにて紹介しています。
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まとめ:あなたの「頭の中の言葉」に気づくことから始めよう
ダイエットがうまくいかないとき、私たちは「食べ物」や「意志の強さ」ばかりに目を向けがちです。しかし本当に向き合うべきは、あなたの頭の中でささやかれる「言葉のルール」です。
物事を極めていく過程において、プロスポーツ選手が「最後は自分との闘いです」とおっしゃることがありますが、あれは結局のところ、「自分が望む未来を邪魔する頭の中の言葉(罠)」との闘いなのです。
減量に取り組まれる方は、次に「食べたい!」と思ったり、「頑張ったからご褒美を食べよう」という考えが浮かんだりした時は、一瞬立ち止まってみてください。そして、「あ、今自分は言葉の罠(トラッキングやオーグメンティング)にハマりそうになっているな」と気づくだけでも、行動は少しずつ変わっていきます。
当院は八女市黒木町で診療しておりますので、何か気になることや上手くいかないことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。
冨田医院 医師 岡田一樹