ブログ

  • HOME
  • ブログ
  • 夜中に食べてしまうのは意志が弱いから?「夜間摂食症候群」の症状と原因

夜中に食べてしまうのは意志が弱いから?「夜間摂食症候群」の症状と原因

夜中に食べてしまうのは意志が弱いから?「夜間摂食症候群」の症状と原因

「日中はそれほど食欲がないのに、夜になると猛烈にお腹が空いて食べてしまう」「夜中に目が覚めて、何か口にしないと再び眠れない」「朝起きると胃が重く、朝食を食べる気が起きない」——このような症状に悩まされていませんか?

「意志が弱いから」「ダイエットの忍耐力が足りないから」とご自身を責めてしまう患者さんは非常に多くいらっしゃいます。しかし、夜間の過剰な摂食行為は、決して個人の意志や性格の問題ではなく、「夜間摂食症候群(Night Eating Syndrome: NES)」という明確な摂食・睡眠障害の一種である可能性があります。

当院の減量外来でも、なかなか体重が落ちないとご相談に来られる患者さんの中に、この夜間摂食症候群が隠れているケースが多く見受けられます。今回は、夜間摂食症候群の原因や特徴、そして医療機関でどのように改善を目指していくのかを詳しく解説します。

1. 夜間摂食症候群(NES)とは?主な特徴と診断の目安

夜間摂食症候群(NES)は、1955年にアメリカの精神科医アルバート・ストゥンカートらによって提唱された概念で、現在は摂食障害および睡眠障害の領域で研究が進んでいる病態です。

単なる「夜食が好き」「夜遅くの晩酌がやめられない」といった生活習慣とは異なり、体内時計の乱れとホルモンバランスの不調が複合的に関与しているのが特徴です。一般的には以下のような基準や傾向が見られます。

【夜間摂食症候群の主なセルフチェック項目】

  • 1日の総摂取カロリーの25%以上を夕食以降(または夜間)に摂取している
  • 週に2回以上、夜間に目が覚めて食べ物を摂取する(覚醒下摂食行為)
  • 朝食を食べる気がまったく起きない(朝の食欲不振:Morning Anorexia)が週の半分以上ある
  • 夕方から夜にかけて、強い抑うつ気分や不安感、焦燥感が強まる
  • 「何かを食べないと絶対に眠れない」という強い強迫観念がある
  • 夜間に食べる行為に対して、罪悪感や葛藤を感じている

2. なぜ夜にお腹が空くのか?NESの発生メカニズム

夜間摂食症候群の原因は、意志の弱さではありません。人間の体に備わっている「生体リズム」と「ホルモン分泌」のズレが深く関係しています。

① 満腹ホルモン(レプチン)と睡眠ホルモン(メラトニン)の低下

通常、健康な人の体内では、夜間になると食欲を抑える「レプチン」というホルモンと、自然な眠りを誘う「メラトニン」というホルモンの濃度が高まります。これにより、睡眠中に食欲で目が覚めることなく、朝まで安眠できるようになっています。しかしNESの患者さんでは、夜間のレプチンおよびメラトニンの分泌量が著しく低下していることが研究で分かっています。食欲のブレーキがかからず、眠りも浅くなるため、夜間に食べ物を求めてしまうのです。

② ストレスホルモンの上昇とセロトニンの不足

日中の過度なストレスや長期的精神的プレッシャーを受けると、ストレスホルモンである「コルチゾール」が過剰に分泌されます。また、脳内の神経伝達物質であり「幸せホルモン」とも呼ばれる「セロトニン」が不足します。セロトニンには気分を安定させ、糖質への欲求をコントロールする働きがあるため、これが不足すると脳は「手軽にセロトニンを増やせる炭水化物や甘いもの」を猛烈に要求するようになります。

③ 無理な日中の食事制限

「太りたくないから」と日中に極端なカロリー制限や朝食・昼食の欠食を行うと、夜間になるにつれて脳のエネルギー渇望がピークに達します。昼間の我慢の反動が夜間の過食を引き起こすという悪循環が形成されてしまいます。

3. 夜間摂食症候群が健康と体重に与える影響

夜間、特に22時以降の食事が太りやすいことには明確な理由があります。私たちの体内には「BMAL1(ビーマルワン)」というタンパク質が存在し、これが体脂肪の合成を強力に促します。BMAL1の量は夜間(とりわけ22時〜2時頃)に日中の数倍から数十倍に達するため、同じカロリーを摂取しても夜間のほうが圧倒的に体に脂肪として蓄積されやすくなります。

また、夜間摂食症候群を放置すると、単に肥満が進むだけでなく、以下のような健康被害を及ぼすリスクが高まります。

  • 生活習慣病の発症・悪化:2型糖尿病、高脂血症(脂質異常症)、高血圧症など
  • 消化器系疾患:食後すぐに横になることで胃酸が逆流する「逆流性食道炎」
  • 睡眠の質低下:夜間の消化活動により胃腸が休まらず、熟睡感の欠如や日中の激しい眠気につながる
  • 精神的ストレス:「自己コントロールができない」という絶望感から、うつ状態や不安障害を併発しやすい

4. ご家庭でできる今日からの改善アプローチ

症状を緩和し、正常な生体リズムを取り戻すために、まずは以下のセルフケアから意識してみましょう。

① 朝日を浴びて「朝食」を一口でも摂る

起きたらまずカーテンを開け、太陽の光を浴びることで体内時計のリセット(セロトニンの合成開始)が行われます。朝は食欲がなくても、バナナ1本やヨーグルト、お味噌汁1杯など、少量のタンパク質や糖質を口にすることで、体内時計が「朝」を認識し、夜間の不必要な食欲の偏りを正す助けになります。

② 夜間の「環境調整」を行う

枕元やベッドの近くにスナック菓子や手軽に食べられるものを置かないようにしましょう。また、夜間に目が覚めた際に台所へ直行する行動パターンを遮断するため、食べ物の保管場所を変えたり、目の届かない場所に仕舞い込むなど物理的なハードルを作ることが有効です。

③ 光の刺激を減らし、リラックスタイムを作る

就寝直前までのスマートフォンやパソコンの操作は、ブルーライトによってメラトニンの分泌を著しく妨げます。ぬるめのお風呂に浸かる、アロマを活用する、軽めのストレッチを行うなど、副交感神経を優位にする入眠儀式を取り入れましょう。

5. 減量外来で行う専門的な治療

セルフケアだけでは改善が難しい場合や、すでに肥満や生活習慣病の傾向が見られる場合は、医療機関での専門的な治療が必要です。当院の減量外来では、以下のような多角的なアプローチでサポートを行います。

・医学的アセスメントと血液検査

耐糖能異常や甲状腺機能障害、睡眠時無呼吸症候群など、他の代謝性疾患や睡眠障害が潜んでいないかを臨床的に診断します。

・認知行動療法(CBT)やカウンセリングのアプローチ

「夜食べないと眠れない」という思考のパターン(歪み)を分析し、行動記録(食事日記や睡眠日誌)を通じて、食べること以外のストレス解消法や代替行動を段階的に身につけていきます。

・薬物療法(必要に応じた処方)

セロトニンの再取り込みを調整する薬剤(SSRI)や、睡眠の質を改善する適切な睡眠導入剤、食欲を適切にコントロールする治療薬(GLP-1受容体作動薬等を含む医学的適応の判断)などを患者様の状態に合わせて組み合わせて検討します。

一人で抱え込まず、ご相談ください

夜間摂食症候群は、「意志の強さ」だけで克服しようとすると、かえってストレスが増大し、リバウンドや抑うつ症状の悪化につながりやすい特徴があり、過食性障害と同じようになかなか治りにくい人もいる病気です。

※過食性障害のブログは下記から参照下さい。
【肥満外来の落とし穴】ダイエットの前に知っておきたい「過食性障害」と「神経性過食症」

「夜中に食べる習慣がやめられない」「ダイエットとリバウンドを繰り返している」とお悩みの方は、どうぞご自分を責めずに、まずは一度当院の減量外来にご相談ください。体が発しているシグナルを正しく理解し、無理のないペースで健康的な毎日を取り戻していきましょう。


冨田医院

医師 岡田一樹

医療法人 尚恵会 冨田医院

医院名
医療法人 尚恵会 冨田医院
所在地
〒834-1217
福岡県八女市黒木町黒木87-1
電話番号
0943-42-0173
駐車場
有り