
ブログ
標準体重という考えは意味がない?減量における理想的な目標体重とは?

こんにちは。冨田医院の医師、岡田一樹です。
ダイエットや健康管理を始めるとき、多くの人が最初に目にするのが「標準体重(BMI 22)」という言葉ではないでしょうか。健診で「まずは標準体重を目指しましょう」と言われたり、ネットの計算ツールで出てきた数字を見て「あと10キロも痩せなきゃいけないのか…」とため息をついたりした経験がある方も少なくないはずです。
しかし、代謝を専門とする医師として私が皆さんに一番お伝えしたいのは、「標準体重は、あなた個人が無理に目指すべき絶対的なゴールではない」ということです。
今回は、なぜ標準体重があまりあてにならないのか、そして当院の減量治療において、どのようにして「リバウンドしない、本当に意味のある目標体重」を患者さんと一緒に決めているのか、医学的エビデンスと独自の視点を交えて詳しくお話しします。
1. 標準体重は「集団の統計」であり、「個人の指標」ではない
そもそも「標準体重(BMI 22)」とは、どのようにして決められた数字なのでしょうか。
これは、何万人、何十万人という膨大な日本人の健康データを何年も追跡した「疫学調査(統計)」に基づいています。統計上、BMIが22付近のグループが、最も高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病にかかりにくかったという事実があるため、一応の目安として設定されているに過ぎません。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。「集団の平均」が、そのまま「あなた個人」に当てはまるわけではないのです。
人間には一人ひとり、骨格、筋肉量、遺伝的体質、これまでの体重の歴史、そしてライフスタイルがあります。例えば、筋肉質で代謝が良い人が無理にBMI 22まで体重を落とそうとすれば、大切な筋肉まで削ぎ落としてしまい、かえって代謝が落ちて体調を崩してしまうこともあります。また、年齢を重ねるにつれて、少しふくよかな(BMI 24〜25前後)人の方がむしろ死亡リスクが低く長生きであるというデータも近年多数報告されています。
つまり、標準体重という枠組みに自分の体を無理やり当てはめようとすること自体が、科学的なようでいて、実は個人にとっては不自然なアプローチになり得るのです。
2. 肥満症ガイドラインが定める「最初の減量目標」とは?
では、日本の医学界(日本肥満学会)が発行している『肥満症診療ガイドライン』では、どのような減量目標が推奨されているのでしょうか。
実はガイドラインでも、「いきなり標準体重を目指しなさい」とは一言も言っていません。ガイドラインで定められている初期の目標は、非常に現実的なものです。
| 現在の状態 | まず目指すべき減量数値 | 医学的な意義 |
|---|---|---|
| 肥満症(BMI 25以上) | 現在の体重の「3% 〜 5%」の減量 | 血糖値、血圧、脂質などのデータが劇的に改善する |
| 高度肥満症(BMI 35以上) | 現在の体重の「5% 〜 10%」の減量 | 内臓脂肪が減少し、合併症のリスクが大きく低下する |
※参考:日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン』
例えば、体重が80kgの方であれば、3%〜5%というと「2.4kg 〜 4kg」です。これを聞いて、「えっ、それだけでいいの?」と思われた方も多いのではないでしょうか。
医学的には、わずか3%〜5%の減量であっても、内臓脂肪はしっかり減少し、健康上のメリット(血液データの改善など)は十分に得られることが証明されています。最初から10キロも20キロも痩せる必要はないのです。
※どれくらい体重を落とせば血管の病気を防げるかについて解説したブログは下記から御参照下さい。関連記事:何キロ痩せれば心臓病を防げる?NHO-JOMS研究が示す「5%・7.5%」の壁
3. 当院の独自アプローチ:「正しい体重」より「納得できる体重」を
当院の減量外来では、この『肥満症診療ガイドライン』の医学的エビデンスを当然のベース(基本)として治療を行います。しかし、単に「ガイドラインに書いてあるから、今回は3kg減量を目標にしましょう」と機械的に決めることはしません。
なぜなら、「医学的に健康に良いから、この体重で満足しなさい」という押し付けの考え方は、長期的には絶対にうまくいかない(リバウンドする)と考えているからです。
どれだけ血液検査の数値が良くなっても、患者さんご自身が「まだ鏡で見た自分の体型が嫌だ」「本当はもう少し服をきれいに着こなしたい」「この体重では自分が納得いかない」と不満を抱えていたらどうなるでしょうか。その不満はストレスとなり、ダイエットのモチベーションを維持することが難しくなってしまいます。
私の実感としても、減量外来に初診で来られる患者さんで、最初から「5%程度の減量」を目標にしている方はほとんどいらっしゃいません。大多数の方は、やはり「10%以上の減量」を目標にして来院されます。それだけ、ご自身の体型や体重に強い思いを持っていらっしゃるということです。
減量において本当に難しいのは、「一時的に痩せること」ではなく、「痩せた体重をこの先何年も維持すること」です。維持期という長い道のりをリバウンドせずに歩むためには、他人に決められた数字ではなく、「患者さんご自身がその体重に心から満足していること」が不可欠なのです。
4. リバウンドを防ぐ「3つの体重(理想・希望・許容)」の考え方
そこで当院では、患者さんと目標体重を決める際、体重を以下の3つの考え方に分けて整理します。ここを明確にすることで、心に無理のない、リバウンドしにくい目標が見えてきます。
① 理想体重
- 特徴: いわゆる「こうなれたら最高だな」という憧れの数字。過去の一番痩せていた時の体重や、SNSで見かける美容体重などがこれに該当します。
- 当院の捉え方: 夢やモチベーションとして持つのは素晴らしいですが、現在の代謝や年齢からすると「やや非現実的」であることが多く、ここだけを絶対のゴールにすると、到達できなかった時に挫折やリバウンドの原因になります。
② 希望体重
- 特徴: 「現実的な範囲内で、自分が十分に満足でき、心地よく過ごせる理想の数字」です。
- 当院の捉え方: 生活習慣を少し見直し、無理のない範囲の食事と運動を継続することで十分に達成可能な、実質的な「主目標」となります。
③ 許容体重
- 特徴: 「標準体重ほどは痩せていないけれど、体も軽くなり、検査数値も良くなって、自分としても『最低限、これくらいをキープできればまずは合格』と思える数字」です。
- 当院の捉え方: 心と体の健康が両立する「安全防衛線」です。万が一、仕事やプライベートが忙しくなって希望体重を維持できなくなっても、この許容体重の範囲内に留まっていれば良しとします。
💡 「希望体重 〜 許容体重」のゾーンを目指すメリット
当院が目指すのは、ガチガチのピンポイントな数字ではなく、この【希望体重 〜 許容体重のあいだ(満足ゾーン)】に体重を落ち着かせることです。
このゾーンに入ると、患者さんは以下のようなポジティブな変化を実感されます。
- 自己肯定感が高まる: 「自分で納得して決めた目標を達成できた」「この体なら悪くない」という満足感が得られます。
- 維持がラクになる: 理想体重をキープするためには極端な食事制限が必要かもしれませんが、希望体重〜許容体重であれば、生活習慣の制限は緩くて済むことが多いです。多少外食が続いて体重が増えても、「許容体重の範囲内だから大丈夫、また少しずつ戻そう」と冷静に対処できます。
- リバウンドから卒業できる: 「今の体重に満足している」ということ自体が、その体重を維持する強い動機(モチベーション)になります。結果として、その後の長い人生において、健康的な体重をずっとキープできるようになります。
減量外来は、あなたを「標準体重」という規格品に当てはめる場所ではありません。あなたが今よりもっと体を軽くし、病気を予防し、何より「今の自分が一番好きだ」と満足して毎日の生活を楽しめるようになるための場所です。
「何キロまで落とせばいいのか分からない」「いつも無理な目標を立ててリバウンドしてしまう」という方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
冨田医院 医師 岡田一樹