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断食とダイエットの意外な関係。減量外来の視点から考える、効果的な取り入れ方

断食とダイエットの意外な関係。減量外来の視点から考える、効果的な取り入れ方

こんにちは。冨田医院の岡田一樹です。

テレビやSNS、健康雑誌などでトキドキ目にする「断食(ファスティング)」。有名人の方が実践されているという話題性もあり、「体に良さそう」「手軽に痩せられそう」と、実際に試してみたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、最新の医学的データを詳しく見ていくと、「断食は本当にダイエットに対して、一般的な食事制限以上の効果があるのだろうか?」という点については、少し慎重に考える必要があると感じています。今回は、巷のブームに流されないために知っておきたい断食の知識と、当院の減量外来がどのようにこれらを捉えているのかについて解説します。


1. 科学的データから見る、断食とダイエットの関係

結論からお伝えしますと、近年の大規模な臨床研究において、「断食には、通常のカロリー制限と比べて、それ以上の特別なダイエット効果(脂肪燃焼効果)は認められないかもしれない」ということが分かってきました。

例えば、2020年にアメリカの医学雑誌『JAMA Internal Medicine』に掲載された臨床試験(TREAT試験)が参考になります。この研究では、116人の肥満に悩む方を「16時間断食を行うグループ」と「3食規則正しく食べるグループ」に分け、12週間追跡しました。その結果、最終的な体重の減少量には、両者の間でほとんど差が見られなかったと報告されています。

さらに注意したい点として、断食を行ったグループでは、減った体重のうち「筋肉量(除脂肪体重)」が減少してしまっていた割合が、通常よりも高かったことが示されています(通常の食事制限における筋肉減少は、一般的に20〜30%程度に留まることが多いとされています)。

また、2022年の『The New England Journal of Medicine(NEJM)』に掲載された1年間に及ぶ研究でも、全体のカロリーが同じであれば、時間を制限してもしなくても、減量効果や代謝の改善度はほぼ同じであるという結論に至っています。

これらのデータから考えると、断食で痩せる場合、体内で特殊なスイッチが入ったというよりも、「食べる時間を狭めた結果、1日の総摂取カロリーが自然と減ったから」という側面が強いようです。そのため、ただ「時間を守れば何を食べてもいい」と自己流で続けてしまうと、思ったほどの減量に繋がらないばかりか、筋肉が減って基礎代謝が落ち、かえってリバウンドしやすい体を作ってしまうリスクも懸念されています。


2. 体重減少だけでなく、健康面で期待できる「細胞のバランス」

では、断食にはメリットが全くないのかというと、決してそんなことはありません。実際の体重減少に対する効果は穏やかかもしれませんが、「細胞レベルでの健康維持(アンチエイジングや代謝の質の改善)」には、興味深い効果が期待されています。

人間の細胞内には、私たちが食べた糖や脂肪をエネルギーに変換する「ミトコンドリア」という大切な場所があります。しかし、常に栄養が満たされた状態が続くと、このミトコンドリアは次第に働きが鈍くなり、古く傷ついたものが細胞内に溜まってしまうことがあります。劣化したミトコンドリアは脂肪の燃焼効率が落ちるだけでなく、細胞に負担をかける原因にもなり得ます。

ここでポイントとなるのが「空腹時間」です。人間の体は、空腹時間が一定時間を超えると、細胞の自食作用である「オートファジー」が働きやすくなります。なかでも、古くなったミトコンドリアを優先的に分解・リサイクルするシステムが活性化すると言われています。

つまり、断食の本当のメリットは、体重を急激に落とすことというよりも、古い部分を一度整理して、ピカピカの新しいミトコンドリアへと入れ替える「細胞のゴミ掃除」を手助けし、老化を遅らせたり、体の調子を整えたりする点にあると考えられています。この効果自体は、医学的にも非常に魅力的なものです。


3. 当院の減量外来の考え方:体質や食行動の癖で「使い分ける」

専門外来として、ブームだからといって全員に同じように断食を勧めることはありません。当院では、患者様一人ひとりの「食生活の傾向」や「体質」を伺いながら、以下のように柔軟に対応しています。

① 12時間程度の「プチ断食」を健康維持としてお勧めする場合

例えば、夜の20時に夕食を終えたら、翌朝の8時までは水やお茶などで過ごす、というような12時間程度のゆるやかな「プチ断食」であれば、筋肉を大きく減らすリスクを避けながら、ミトコンドリアの質を上げる恩恵を安全に受けやすいと考えられます。胃腸を毎晩しっかり休めることで、睡眠の質が向上するメリットもあり、適していると思われる患者様にはお話しすることがあります。

② 「空腹の反動で過食しやすい方」にはお勧めしない場合

一方で、最も注意しなければならないのが、空腹時間が長くなる反動で、食事の時間になった途端に反動でドカ食い(過食)をしてしまうタイプの方です。断食のストレスから食欲が乱れてしまう場合は、断食という選択肢は一度脇に置くようにしています。まずは食欲のコントロールを安定させることが、減量において何より大切だからです。


4. 医学的なアプローチ:やるなら「朝食抜き」よりも「夕食を軽めに」

もし、ライフスタイルや体質的に「少し空腹時間を意識してみよう」となった場合、実践しやすさから「朝食を抜いて、昼食と夕食を食べる」というスケジュールを選ぶ方が多いようです。しかし、ここには少し盲点があります。最新の「時間栄養学(『何をどれだけ食べるか』だけでなく『いつ食べるか』が体にどう影響するかを研究する医学)」の観点から見ると、朝食抜きはあまり効率が良くない可能性があります。

人間の体には「体内時計」が備わっており、その時計を毎朝リセットして1日の代謝スイッチを入れる大きなトリガーが「朝食を摂ること」だと言われています。朝食を抜くと、午前中の代謝が上がりにくくなったり、生活のリズムが乱れやすくなったりすることがあります。

さらに、人間の体は夜遅い時間帯ほど、脂肪を溜め込みやすくできている傾向があります。また、睡眠中に胃腸の中に食べ物が残っていると、消化活動のために睡眠が浅くなり、結果として代謝が落ちてしまうことも考えられます。

したがって、もし空腹時間をしっかり確保するライフスタイルを取り入れるのであれば、朝を抜くのではなく、「朝食と昼食は日中にしっかり摂り、夕食を抜く(または早い時間に軽く済ませる)」という形が、医学的・時間栄養学的には理にかなっており、当院としてもお勧めしやすい方法です。

※時間栄養学について解説した記事は下記からお願いします。
関連記事:食べる時間によって痩せやすさは変わる?-時間栄養学の視点-


最後に

断食(ファスティング)は、決して「誰でも簡単に痩せられる魔法の裏技」というわけではありません。良い面もある一方で、一歩間違えれば筋肉を減らし、食欲を乱してしまう可能性もある繊細なアプローチです。大切なのは、流行のやり方に無理に合わせるのではなく、「あなたの体質や生活習慣に、その方法が本当に合っているか」を見極めることです。

当院は八女市黒木町で診療しております。一人で悩まずに、まずは安心してお気軽にご相談くださいね。

冨田医院 医師 岡田一樹

医療法人 尚恵会 冨田医院

医院名
医療法人 尚恵会 冨田医院
所在地
〒834-1217
福岡県八女市黒木町黒木87-1
電話番号
0943-42-0173
駐車場
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