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食べてないのに痩せないのはなぜ?減量外来の医師が教える4つの原因と代謝の仕組み

こんにちは。八女市黒木町の冨田医院、医師の岡田一樹です。
当院の減量外来を受診される患者さんから、最も多くいただくご相談があります。それは、「先生、本当に1日2食に減らしているのに、なぜか体重が1キロも減らないんです」「むしろ増えていくのはなぜですか?」という切実な訴えです。
周囲から「実は食べているんじゃないの?」と疑われたり、「自分の意志が弱くて怠けているからだ」とご自身を責めたりしていませんか?
結論から申し上げますと、「食べていないのに痩せない」というのは、あなたの勘違いでも根性不足でもありません。そこには意外と見落としがちな原因があることがあります。今回は、減量外来の臨床現場で見つかる「4つの具体的な原因」と、その対策を掘り下げて解説します。
原因1:病気・ホルモン異常・内服薬が代謝をブロックしている
医療機関としてまず最初に血液検査などで確認しなければならないのが、病気や薬剤が原因で起こる「二次性肥満(にじせいひまん)」です。これは個人の努力や我慢では絶対に解決できません。
① 内分泌疾患(ホルモンの異常)
代謝をコントロールするホルモン分泌の低下・過剰により、脂肪燃焼システムが強制ストップしてしまう病気です。
- 甲状腺機能低下症(橋本病など): 全身の細胞の「エンジン」を回す甲状腺ホルモンが減少する病気です。車のアイドリングが極限まで落ちた状態になるため、食事を減らしてもエネルギーが消費されず、体重が増加します。
- クッシング症候群: 副腎皮質からコルチゾールというストレスホルモンが過剰分泌される病気です。手足は細いのに、お腹周りだけに脂肪が異常に蓄積する「中心性肥満」や、顔が丸くなる「満月様顔貌」が特徴です。
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS): 月経不順を伴う女性に多く、インスリン抵抗性(インスリンの効き目が悪くなる状態)を引き起こし、結果として大量のインスリンが分泌されて脂肪を溜め込みやすくなります。
② 薬剤性肥満(他科で処方されている薬の副作用)
現在、他院で治療中の病気がある場合、そのお薬の副作用で代謝低下や水分貯留が起きているケースです。
- ステロイド内服薬: プレドニゾロンなどを長期服用している場合、脂質代謝が変わり脂肪がつきやすくなります。
- 向精神薬・抗うつ薬: オランザピン(ジプレキサ)やミルタザピン(リフレックス)などは、代謝の変化や食欲亢進を起こすことが知られています。
- 一部の糖尿病治療薬・抗ヒスタミン薬: インスリン製剤やSU薬、またアレルギー性鼻炎等で使う古いタイプの抗ヒスタミン薬も体重増加に関与することがあります。
【冨田医院のアプローチ】
当院では、初診時に丁寧な問診と、必要に応じた血液検査(TSH、FT4、コルチゾール、HbA1cなど)を行います。もしこれらの原因が見つかった場合は、ベースにある病気の治療や、主治医の先生と連携してお薬の種類を変更・調整することが先決となります。
原因2:脳の盲点。自覚のない「無意識のカロリー摂取」
血液検査で病気が見つからない場合、次に多いのが本人が「食事」としてカウントしていない場面での摂取カロリーの過小評価です。肥満に関する複数の研究データでも、人は自分の摂取カロリーを無意識に2〜3割少なく申告してしまう傾向が証明されています。
外来でよくある「申告漏れ」の具体例
- 一口だけの「ちょこちょこ食い」: 調理中の味見、子どもが残した唐揚げ1個、職場の差し入れで貰った小さなチョコやアメ。「お皿に盛って席に座って食べたもの」しか食事として記憶に残らないため、これらが完全に脳から消去されています。しかし、チョコ1粒(約30kcal)やクッキー1枚(約50kcal)も、毎日重なれば大きなカロリーになります。
- 「液体カロリー」の見落とし: 水分補給のつもりで飲んでいるスポーツドリンク(500mlで約130kcal)、仕事中のカフェラテ(砂糖入り・1本約100kcal)、毎晩の缶チューハイ(1本約150〜200kcal)。これらは胃を通過するのが早く満腹感が得られないため、本人は「食べていない」と錯覚しがちです。
【冨田医院のアプローチ】
これを解決するために、当院では細かなカロリー計算の代わりに、1週間程度のリアルタイムな「食事モニタリング」を推奨しています。何かを口にするその瞬間にリアルタイムに記録を残すことで、脳の記憶からこぼれ落ちていた「無意識食べ」のファクトを正確に把握することができます。
原因3:極端な糖質制限・カロリー制限による「省エネモード」
「本当に、1日1食、サラダとサラダチキンしか食べていません」というケースです。実は、これこそが最も体重が落ちなくなる原因です。人間の体には、危機から命を守るためのホメオスタシス(恒常性維持機能)が備わっています。
基礎代謝を下回ると起きる「生体防御」のメカニズム
自分の基礎代謝量(成人女性であれば約1,100〜1,200kcal、男性であれば約1,500kcal)を下回るような極端な低カロリー生活が続くと、脳の視床下部は「深刻な飢餓状態が到来した」と判断します。すると、生存のために以下の防衛システムが発動します。
- 活動型甲状腺ホルモン(T3)の低下: 活発な代謝を促すホルモンの分泌をあえて抑え、少ないエネルギーでも心臓を動かし、体温を維持できるように「燃えにくい省エネ体質」へ強制変更します。
- カタボリック(筋肉の分解): 体の中で最もエネルギーを消費する「筋肉」を自ら分解してアミノ酸に変え、エネルギーとして消費してしまいます。筋肉量が減るため、基礎代謝はさらに低下します。
- レプチンの激減と脂肪のロック: 満腹中枢を刺激するホルモン「レプチン」が出なくなり、脳は日常の無意識の活動量(NEAT:座っている時の姿勢保持や貧乏ゆすりなど)を極限まで減らします。同時に、次にいつ入ってくるか分からない栄養に備え、入ってきたカロリーをすべて脂肪細胞へ蓄えようとします。
これが「停滞期」の正体です。この状態でさらに食事を減らすのは火に油を注ぐようなもので、ますます代謝が落ち、元の食事量に戻した瞬間に大リバウンドを起こします。
【冨田医院のアプローチ】
解決策は、「極端な制限を解除し、基礎代謝以上の適正カロリーまで食事量を増やすこと」です。ご飯(炭水化物)や良質なタンパク質をしっかり摂取することで、脳に「もう飢餓は終わったよ」と安心させ、落ち切った代謝のエンジンを再起動します。
原因4:慢性ストレスによる「コルチゾール」が脂肪をロックしている
「ストレスで太る」というのは、やけ食いのような行動面だけでなく、ホルモンの働きによって脂肪のつき方が変わるという医学的な証拠が存在します。
ストレスホルモンがもたらす3つの悪影響
精神的・肉体的なストレスが長期間続くと、副腎皮質から過剰な「コルチゾール(ストレスホルモン)」が分泌され続けます。
- 内臓脂肪への特異的な蓄積: 脂肪細胞にはコルチゾールと結合する受容体がありますが、実はお腹周りの内臓脂肪には、皮下脂肪の数倍もの受容体が存在します。そのため、コルチゾールが高い状態が続くと、摂取したエネルギーが優先的にお腹周りへ呼び込まれ、蓄積されます。
- 高インスリン血症による脂肪分解ストップ: コルチゾールは、戦闘モードに備えて血糖値を上昇させる(糖新生)働きがあります。上がった血糖値を下げるためにインスリンが大量に分泌されますが、インスリンは強力な「脂肪合成・分解抑制ホルモン」です。このため、体が脂肪を燃焼できない状態にロックされてしまいます。
- 食欲コントロールの破壊: ストレスは脳の満腹中枢に作用し、手っ取り早く脳の報酬系を刺激する「高糖質・高脂質な食べ物(ラーメンやスイーツなど)」への欲求を異常に高めます。
【冨田医院のアプローチ】
ストレス性の代謝低下に対して、当院ではまず「適切な睡眠時間の確保」を指導します。睡眠不足そのものが強い肉体的ストレスとなり、ストレスホルモンであるコルチゾールを増加させるからです。外来では睡眠環境の調整のほか、患者さんのライフスタイルに合わせた無理のないリラクゼーション(軽いウォーキングや入浴法など)のアドバイスも実践しています。
まとめ:あなたの「痩せない原因」を科学的に見つけましょう
「食べていないのに痩せない」という現象の裏には、ご紹介したように二次性肥満、認知のギャップ、ホメオスタシス、ストレスホルモンといった、複雑で具体的な原因が必ず潜んでいます。
減量とは、ただ単に食欲と戦う我慢比べではありません。あなたのお体が今、なぜエネルギーを消費できなくなっているのかを特定し、正しく代謝のスイッチを入れ直す医学的なアプローチです。
「これ以上どうしていいか分からない」と一人で抱え込まずに、ぜひ一度、お気軽に当院にご相談ください。
『冨田医院 減量外来専用ホームページ』
冨田医院 医師 岡田一樹