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ストレス食いがやめられない原因とは?医師が解説する科学的な対処法

「仕事で嫌なことがあると、夜中にチョコレートを一袋一気食いしてしまう…」
「イライラすると、お腹が空いていないのにスナック菓子に手が伸びる…」
減量外来に通われる多くの患者さんが、このように「ストレス食い」に悩まされています。そして決まって、「自分はなんて意志が弱いんだろう」と激しく落ち込んでしまわれます。
しかし、まず最初にお伝えしたいのは、ストレス食いはあなたの「意志の弱さ」や「根性のなさ」のせいではないということです。実は、ストレスを感じた時の人間の脳の仕組みが原因なのです。
今回は、なぜ私たちはストレスを感じると過食してしまうのか、その医学的な原因と、根性論に頼らない「科学的に正しいストレス食いの止め方」を解説します。
—1. なぜストレスを感じると食べてしまうのか?2つの医学的な原因
人間がストレスを感じたとき、体内や脳内では恐ろしい「過食のドミノ倒し」が起きています。原因は大きく分けて2つあります。
① ストレスホルモン「コルチゾール」の暴走
私たちは強いストレスを感じると、体内で「コルチゾール」というストレスに打ち勝つためのホルモンを大量に分泌します。このコルチゾールには、なんと「高カロリーな脂質や糖質(甘いものや脂っこいもの)を猛烈に欲させる」という厄介な作用があります。
つまり、イライラしたときにジャンクフードやスイーツが食べたくなるのは、あなたの心がだらしないからではなく、ホルモンによって脳がコントロールされている状態なのです。
② 脳が学習してしまった「おかしなご褒美回路(報酬系)」
もう一つの原因は、脳の学習機能です。疲れているときやイライラしているときに甘いものをドカンと食べると、脳内で「ドーパミン」が分泌されます。
すると脳は、一時的に不安やイライラが消えてスーッと楽になった感覚を覚えます。この快感を覚えた脳は、恐ろしいルールを作ってしまいます。
脳が作る誤ったルール:
「ストレスが溜まってつらい時は、手っ取り早く高カロリーなものを食べて安心しなさい!」
こうして、食べる行為が「心の精神安定剤」代わり(自己治療)になってしまい、ストレスを感じるたびに自動的に手が食べ物へ伸びるという「ストレス食いの依存ループ」が完成してしまうのです。
—2. 医学的にストレス食いをやめるための3つのアプローチ
原因が「脳のバグやホルモン」である以上、「我慢しよう」という精神論で立ち向かっても、脳の強力なブレーキには勝てません。大切なのは、科学的な仕組みを使ってそのループを断ち切ることです。
アプローチ①:脳の興奮を鎮める「5分ディレイ(遅延)法」と「食べること以外」のストレス対処
脳科学的な研究において、ストレスによって湧き上がる「食べたい!」という強烈な衝動のピークは、実は約5分〜10分しか持続しないことが分かっています。その波さえ乗り越えれば、衝動は自然と小さくなることが多いのです。
衝動が襲ってきたら、「絶対に食べちゃダメだ」と正面から戦うのではなく、「とりあえずタイマーを5分セットして、別のことをして待ってみよう」と、時間を遅らせる工夫(ディレイ)をしてみてください。
ただじっと我慢して5分待つのはつらいので、「食べること以外」のストレス対処法をあらかじめ決めて用意しておくことが成功の鍵になります。ストレスが強い時に脳は瞬時に良いアイデアを思いつけないため、前もってスマホやノートに「やることリスト」を書き出しておくのが医学的にも非常に効果的です。
・温かいハーブティーや白湯、炭酸水をゆっくり飲む
・お気に入りの動画(お笑いや動物など)をスマホで1本見る
・好きな音楽を1曲、目を閉じて聴く
・スクワットを10回、または深呼吸を5回する
・今いる部屋から別の場所へ移動して、視界(空間)を変える
イライラしたら、まずはこのあらかじめ決めておいたリストを試してみましょう。「食べる」というワンパターンな行動しかなかった脳に、別の逃げ道を作ってあげることで、5分後には脳の興奮がスーッと収まりやすくなります。
アプローチ②:心理療法ACT(アクト)で「食べたい思考」を実況中継する
以前のブログでもご紹介した心理療法「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」のアプローチも非常に有効です。
ストレス食いをしてしまうとき、私たちは頭の中の「食べなきゃこのイライラは収まらない!」という言葉の罠に完全に飲み込まれています。
これに対抗するために、「食べたい!」と思ったら一瞬立ち止まり、その感情を一歩引いたところから客観的に見つめてみてください。
【心のつぶやきを書き換えるワーク】
×「ムシャクシャするからケーキを食べたい!」
◯「私は今、ストレスのせいで『ケーキを食べたい』という強い思考を頭の中に生み出しているな」
このように、自分の頭の中を実況中継するように言葉にすることで、感情の荒波に飲み込まれず、「食べたいという嵐が過ぎ去るのをじっと観察する」ことができるようになっていきます。
※ACTについて詳しく解説したブログが下記を参照下さい。
関連記事:肥満症の治療の新たな選択肢。ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)とは何か?
アプローチ③:生理学的な対策「血糖値の乱高下」を防ぐ
実は、ストレスに加えて「低血糖(血糖値の急降下)」が重なると、人間の自制心は簡単に崩壊し、過食に繋がってしまいます。
糖質主体の食事やドカ食いをしていると、血糖値が急上昇した反動で、その後血糖値が急激に下がります。この血糖値が下がる瞬間に、脳は「エネルギー危機だ!早く糖質を補給しろ!」と、激しい「偽物の空腹感」を作り出します。
日頃からこの血糖値のアップダウンをなくしておくことが、最大の防御になります。
- 食事はタンパク質(肉・魚・大豆)と食物繊維(野菜・海藻)を最初に食べる
- 空腹時間が長すぎて夜に爆発するのを防ぐため、午後3〜4時頃にゆで卵やナッツ、高カカオチョコレートなどの「血糖値を上げない間食」を戦略的に挟む
これらを行うだけで、脳からの異常な食事シグナルそのものを根元から減らすことができます。
—まとめ:あなたの「頭の中の言葉」に気づくことから始めよう
ダイエットがうまくいかないとき、私たちはどうしても「食べ物」や「意志の強さ」ばかりに目を向けがちです。しかし本当に向き合うべきなのは、ストレスがかかった時に脳内に湧き上がる「これを食べれば楽になるよ」という言葉の罠です。
次にイライラして「何か食べたい!」となった時は、どうか自分を責めず、「あ、今ストレスのせいで脳のバグが動いているな」「あらかじめ決めておいた別のストレス対処法を5分間試してみようかな」と、冷静に自分の状態に気づいてあげてください。それだけでも、心に少しの隙間が生まれ、行動は少しずつ変わり始めます。
当院は八女市黒木町で無理のない減量外来を行っております。ストレス食いがどうしても止まらない、一人で仕組みを作るのが難しいという方は、いつでもお気軽にご相談ください。
冨田医院 医師 岡田一樹