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健康になりたいから痩せるではダイエットが続かない理由

「健康のために痩せよう」と決意したはずなのに、なぜダイエットは続かないのでしょうか?
健康診断で数値を指摘されたり、将来の病気が心配になったりして「健康のために痩せなきゃ」と一念発起する方は少なくありません。
しかし、非常に多くの方が数週間から数か月で元の食生活に戻ってしまい、リバウンドを経験します。
実は、医学的・心理学的に見ると「健康になりたい」という理由は、減量を長く継続させるための動機としては弱すぎることが分かっています。なぜ続かないのか、そしてリバウンドを防ぐために「何をどこまで掘り下げるべきなのか」をお話しします。
1. 「健康になりたい」が続かない2つの理由
減量外来で「どうして痩せたいと思われたのですか?」とお尋ねすると、最も多く返ってくるのが「健康になりたいから」「長生きしたいから」という言葉です。
もちろん、健康は素晴らしいことです。しかし、人間の脳の仕組みから見ると、「健康」という言葉にはダイエットを挫折させやすい2つの落とし穴があります。
落とし穴①:「健康」は抽象的すぎて実感が湧きにくい
目の前にあるラーメンやスイーツは「今すぐ強烈な快感(ドーパミン)」を与えてくれます。一方で、「10年後の健康」や「血液検査の数値」は目に見えず、今すぐ嬉しい変化として手応えを感じることができません。脳は常に「遠くの曖昧な利益」よりも「目の前の具体的な快感」を優先するようにできているため、抽象的な健康だけでは目の前の誘惑に勝てないのです。
落とし穴②:「健康」は手段であって、人生の目的ではない
健康であること自体が人生の究極の目的という人はいません。健康とは、本来「何かやりたいことを実現するための土台」に過ぎないはずです。チケットを手に入れること自体を目的にしてしまうと、手に入りそうになった途端、あるいは手に入れる過程の我慢がつらくなった瞬間に、モチベーションが燃え尽きてしまいます。
2. 問いを深める:「健康になって、本当は何がしたいのか?」
では、ダイエットを無理なく続けるためにはどうすれば良いのでしょうか。それは、「健康になりたい理由の、さらにその奥にある理由」を深く掘り下げることです。
ご自身にこう問いかけてみてください。
「もし健康な身体が手に入ったら、自分は本当は何をしたいのだろう?」
「体が軽くなったら、誰と、どんな時間を過ごしたいのだろう?」
深く掘り下げていくと、患者さんごとに全く異なる本音の願いが見えてきます。
- 「膝の痛みをなくして、お孫さんと一緒に旅行に行って思い切り走り回りたい」
- 「夕方にバテて家族にイライラしてしまうのをやめ、笑顔で夕食の時間を過ごしたい」
- 「身体が重くて億劫になっていた昔の趣味(山登りや家庭菜園)をもう一度再開したい」
- 「着たい服を堂々と着て、自信を持って旧友に会いに行きたい」
ここまで具体化されて初めて、心の中に「目の前の食事を整える理由」という強力なエンジンが点火します。
3. 「ゴール」と「価値」の決定的な違い
しかし、ここでさらにもう一段階深い視点が必要です。それは、出てきた望みが「一時的なゴール(目標)」なのか、それとも「持続的な価値(人生の進む方角)」なのかを区別することです。
価値観は「進み続ける方角(コンパス)」、目標は「途中の通過点」
心理療法(ACT:アクセプタンス&コミットメント・セラピー)では、目標と価値を次のように明確に分けて考えます。
| ゴール(目標) | 価値(Values:人生のコンパス) |
|---|---|
| ・いつか「達成して終わる」もの ・到達点(例:体重マイナス5kg、旅行に行く) |
・生涯を通じて「どう振る舞いたいか」という方向性 ・終わりがなく、進み続けるプロセス |
| 【弱点】 達成すると燃え尽き、リバウンドしやすい。また、達成できないと自己嫌悪に陥る。 | 【強み】 今この瞬間から実践でき、生涯にわたって習慣を支え続けるエネルギーになる。 |
例えば、「孫とディズニーランドに行く」というのはゴールです。もちろん素敵な目標ですが、旅行が終わってしまえばその行動は達成されて終了し、再び元の生活に戻ってリバウンドしてしまいかねません。
これを「価値」にまで落とし込むと、次のようになります。
「自分は家族に対して、常に明るく頼もしく、寄り添い続けられる温かい存在でありたい」
これが価値です。「家族に寄り添い続ける」というあり方には終わりがありません。一生を通じて自分がどう生きたいかという“コンパスの針”だからです。
※ACTについて解説した記事は下記から
肥満症治療における医学的エビデンス:なぜ今、減量外来で「第三世代の認知行動療法」が必要なのか
4. 「価値」に沿った習慣がリバウンドを防ぐ一生モノになる
「体重を減らす」ことだけを目的にしていると、食事をコントロールする行為は「苦しい我慢」「理不尽な制限」にしか感じられません。我慢はエネルギーを激しく消耗するため、ストレスがたまったときに簡単に暴発してリバウンドします。
しかし、自分の深い「価値」と行動が結びつくと、選択の意味がガラリと変わります。
日々の選択の意味が変わる瞬間
「甘いものを我慢しなければいけない」のではなく、
「明日も大切な仕事に集中し、家族と穏やかに笑い合える自分を選ぶために、今夜はこの食事にしておこう」
これは我慢ではなく、「自分が本当に生きたい人生を自ら選び取る行為」です。
体重という数値は、日々の水分量や体調によって増えたり減ったりします。しかし、自分の価値さえブレなければ、仮に1日食べすぎて体重が増えても「ダメな自分」と責める必要はありません。「方角が少しずれただけだから、また明日からコンパスの向きに歩き出そう」と自然に修正できます。
だからこそ、価値に根ざした生活習慣は一生モノになり、二度と過酷なリバウンドを繰り返さなくなるのです。
5. 冨田医院の減量外来が目指すもの
福岡県八女市黒木町の冨田医院で行っている減量外来では、単にカロリー計算表を渡したり、機械的な運動を強制したりすることはいたしません。
医学的なアプローチ(必要に応じた生活習慣病の治療や、食欲のメカニズムに働きかけるサポートなど)を確実に行いながら、診察室での対話を通じて「あなたにとって本当に大切にしたい生き方・価値観」を一緒に見つけていくことを何よりも大切にしています。
「これまで何度もリバウンドを繰り返してきた」「どうして痩せたいのか自分でもよく分からなくなってしまった」という方こそ、ぜひ一度ゆっくりお話しにいらしてください。数字の増減に一喜一憂するダイエットを卒業し、心豊かに続けられる人生の習慣を一緒に作っていきましょう。
冨田医院 医師 岡田一樹