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肥満症治療における医学的エビデンス:なぜ今、減量外来で「第三世代の認知行動療法」が必要なのか

肥満症治療における医学的エビデンス:なぜ今、減量外来で「第三世代の認知行動療法」が必要なのか

こんにちは。八女市黒木町にある冨田医院の医師、岡田一樹です。

世の中には「これだけで痩せる」「飲むだけで脂肪が燃焼する」といった、科学的根拠(エビデンス)が曖昧なダイエット方法があふれています。情報が多すぎて、「結局、医学的に本当に正しい減量法は何なのか?」と迷われてしまう方も少なくないはずです。

実は、医療の世界において、日本肥満学会が「明確な治療効果がある」と公式に認めているアプローチは、わずか3つしかありません。それが以下の3つです。

  1. 減量薬(薬物療法)
  2. 肥満外科手術
  3. 行動療法(心理学的アプローチ)

当院の減量外来では、この3つの中でも特に、リバウンドを防ぎ一生モノの習慣を作るための「心理学的アプローチ(行動療法)」に力を入れています。しかし、この行動療法は時代とともに大きく進化を遂げてきました。今回は、なぜ当院が最先端の進化系である「第三世代の認知行動療法」を治療に取り入れているのか、その理由を歴史の変遷とともに深く掘り下げてお話ししたいと思います。


1. 【第一世代】行動のみに焦点を当てた「行動療法」とその限界

そもそも「行動療法」の始まり(第一世代)は、心理学の知見から「いかに人間の行動を直接変えるか」を重視したものでした。減量で言えば、「食事日記をつける」「ドカ食いを避ける」「運動の時間を無理やり作る」といった、目に見える行動のコントロールです。

しかし、この第一世代の専門家たちは、一つの大きな壁にぶつかりました。行動を変えることには熱心だったものの、「そうは言っても、食べたい衝動やイライラという『頭の中の考え(認知)』をどう扱えばいいのか」という問いに対して、はっきりとした答えを出せなかったのです。

その結果、海外の大規模な研究などから、行動だけに焦点を当てて無理に我慢を強いる方法では、治療をやめた後に高い確率でリバウンドが起こることが分かってきました。

2. 【第二世代】考え方の修正を試みた「認知行動療法」の功罪

行動だけを変えても、心がついていかなければリバウンドしてしまう――。そこで次世代として登場したのが、海外を中心に減量外来でも主流となった「第二世代の認知行動療法」です。

これは、従来の行動療法に「認知(=物事の捉え方や考え方)の修正」を組み合わせた治療法です。たとえば、「イライラしたら食べることでしか解決できない」というリバウンドの原因になる極端な思考(歪んだ認知)を見つけ出し、「他の方法でもストレスは発散できる」と、より合理的な考え方に書き換えていくアプローチです。

この第二世代の登場により、リバウンドの予防効果は第一世代よりも明らかに向上しました。しかし、近年になって、医療の現場ではさらなる課題が指摘されるようになります。

「人間の強く思い込んだ考えを、そう簡単に修正できるのだろうか? 無理に考え方を変えようとすることは、人によってはかえって強いストレスになり、万能ではないのではないか」

このような疑問が、精神医学や心理学の最新研究からも次々と報告されるようになってきたのです。

3. 【第三世代】考え方を変えない。最新の心理学アプローチ

そこで現在、世界の医療現場で大きな潮流となっているのが、「第三世代の認知行動療法(ACT、マインドフルネス、弁証法的行動療法など)」です。

この第三世代の最大の特徴は、これまでの常識を覆し、「そもそも、一度浮かんだ認知(考えや感情)を無理に修正することはできない」という前提に立っている点です。

「お腹が空いていないのに、無性に甘いものが食べたい」「ストレスでもう自暴自棄になりそう」といった思考が湧くのは、人間の脳の仕組み上、仕方のないことです。第三世代では、その考えを否定したり無理に変えようとしたりするのではなく、思考との「関わり方(付き合い方)」に焦点を当てます。

💡 第三世代の核心的な考え方

「食べたい」という衝動やストレスが湧き上がってくること自体は、そのまま認めて受け入れる(アクセプタンス)。ただし、その感情に振り回されて『ドカ食いする』という人生を悪い方向へ導く行動をとるのではなく、『自分の人生をより豊かで良い方向へ進めるための行動』を、感情とは切り離して淡々と積み重ねていくというアプローチです。

臨床データ(研究報告)を見ても、治療初期の短期的な体重減少こそ第二世代と互角ですが、「治療終了後の長期的なリバウンドのしにくさ」や「ストレスによるドカ食い(情動摂食)の改善率」においては、第三世代の方が優れた効果を示すことが報告されております。

※ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)の関連記事は下記から
肥満症の治療における認知行動療法の限界。なぜ当院の減量外来は「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」を導入するのか?
肥満症の治療の新たな選択肢。ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)とは何か?


4. 医師として、私がこの治療に挑む理由

私個人の臨床現場での実感としても、従来の「認知の修正(第二世代)」は決して万能とは言えませんでした。「頭では分かっているけれど、考えを変えられないから苦しい」という患者様をたくさん見てきたからです。

だからこそ、湧き上がる感情を否定せず、その関わり方に焦点を当てた「第三世代」の治療を取り組むことで、より患者様に寄り添った、本質的で効果の高い治療が出来ると確信しています。

正直に申し上げますと、この第三世代の認知行動療法と減量外来を組み合わせたアプローチは、一部の心理系の大学の先生方は実践しているものの、臨床の現場の「医師」が実際の外来治療として本格的に取り入れているケースは、全国的にもまだ一般的ではありません。私自身、今でも日々手探りで実践しているのが実情です。

しかし、我慢とリバウンドを繰り返す現代のダイエットの悪循環を断ち切るためには、これこそが現代医療における最適解であると強く信じています。


当院は、福岡県八女市黒木町で診療を行っております。

「今まで何度もリバウンドを繰り返してきた」「ストレスがあるとどうしても食べてしまう」とお悩みの方は、根性論や無理な我慢ではなく、科学的な心の仕組みを使った新しいアプローチを一緒に始めてみませんか。一人で抱え込まず、ぜひお気軽に外来にてご相談ください。

冨田医院 医師 岡田一樹

医療法人 尚恵会 冨田医院

医院名
医療法人 尚恵会 冨田医院
所在地
〒834-1217
福岡県八女市黒木町黒木87-1
電話番号
0943-42-0173
駐車場
有り